エーブックスタッフの水野です。
先日、偶然近所の本屋で『HITMAN』というアメリカの漫画(通称アメコミ)を見つけました。
3000円と値段は決して安いものではないのですが、
「ゴッサムシティを舞台にした、二流・三流ヒーローたちの銃弾にまみれた日常。」
という帯のコピーを見てこれは面白そうだと思い、
また以前からアメコミを読んでみたいと思っていた為、買ってしまいました。
物語の舞台となるゴッサムシティとは、ご存知、スーパーマンと双璧をなすDCコミックス界の看板漫画『バットマン』の舞台でもあります。
この漫画は、ゴッサムシティでバットマンがヒーロー活動をしているその裏の話であります。
二流・三流ヒーローとありますが、彼らの中には正義や悪といった概念は存在しません。
金次第でどんな汚い仕事も請け負うアウトローなのです。
この漫画の主人公はその名もヒットマン(暗殺者)ことトミー・モナハン。
見た目も、薄汚い深緑のコートに短髪の無精髭の黒サングラスと、ヒーロー然としていません。
彼の中のヒーロー的な要素といえば、吸血エイリアンに噛まれたことにより発症した超能力です。
その超能力とは、透視能力と読心術なのですが、その使い方も女性の服の中を覗いたり、読心術でナンパしたりとかなりしょうもないです。
性格も大雑把で適当、普段は友人と酒飲んでポーカーして冗談を言い合っているただのオッサンです。
ただ、暗殺者としての腕は一流で、また徹底した仕事ぶりで相手に容赦ありません。
ただし、モナハンの中では悪人以外は殺さないというルールがあり、友人たちへの義理も厚いです。
物語の中ではバットマンも出てきます。
あのバットマンが汚いアパートや薄汚い裏通りに突如現れる感じがとても恐ろしく描かれており、どんな悪人も黙っちゃう感じがとても出ています。
そういう一般人の視点から見たバットマンも描かれており、すごく良かったです。
そんなバットマンですが、彼からすればヒットマンはただの犯罪者に過ぎないので(というより誰から見てもそうですが)、当然、敵対関係になっております。
モナハンはたびたびバットマンから追われる立場になるのですが、
モナハンにしてみればバットマンは悪人ではないですし、ゴッサムシティの私刑人である彼と敵対して得などありません。
この漫画に収録されている話には、モナハンがジョーカーの暗殺を請け負う話もありバットマンファン的にも必見でしょう。
また、地獄に堕ちたナチスのSS将校5名を合体させたモンスター『マウザー』や、
シャム双生児でありその片方が死んでいるマフィアのボス『モーダブルズ』、
両腕に鉄板を装備したヒーロー『ナイトフィスト』、
通称マイアミの冷血鬼と呼ばれる天才的な殺し屋『ジョニー・ナヴァロン』、
やり手のテキサスの保安官『ハリディ』、
馬鹿デカイ巨体に馬鹿な脳みそのチンピラ宇宙人『ロボ』
自称ヒーローのただの酔っ払いたちで結成されたヒーロー集団『セクション8』・・・
などなど魅力的なキャラクターがいっぱい登場します。
こう見てみると、主人公も超能力者だし、敵も宇宙人やらモンスターやらヒーローやらで、SFヒーロー漫画のように見えますが、決してそうではありません。
クエンティン・タランティーノから影響を受けたといわれている独特な台詞回しや、
ハードボイルドな世界観、そしてその出来事の殆どがゴッサムシティのとある裏通りの話、
というところからして、ダーティ過ぎてとてもじゃないがヒーローアクション漫画と言えません。
しかし、日本の漫画と違うのが、イケメンが一人もいないのです。
日本ですと10人キャラクターがいれば、7、8人はイケメンや男前だったりするのですが、
この漫画では、10人中10人が不細工です。
大体主人公のモナハンですらブ男です。
しかし、どんなに不細工でも「カッコいいな~!」と思ってしまう彼の渋さが最高です。
そうです、アメコミには日本の漫画にはない渋さがあるのだと思います。
そこは文化の違いなのかもしれないですが、日本の漫画はよく出来た筋書きだったり、綿密に練られた設定だったり、オリジナリティがある世界観だったり、そういったものが面白いとされている傾向がありますが、
アメコミの(そういうのは二の次で)、シンプルに”カッコいいモノ”とは何かということを魅せようとするスタンスが僕は好きだと思いました。
美少年や美少女ばかりの日本の漫画に飽きたら、一度アメコミを読んでみるといいかもしれません。