エーブックスタッフの水野です。
先日、チェ・ゲバラの映画を立て続けに二本見ました。
一つはスティーブン・ソダーバーグ監督の『チェ 28歳の革命』と『チェ 39歳 別れの手紙』で、もう一つはウォルター・サレス監督の『モーターサイクル・ダイアリーズ』です。
まずソダーバーグの方は、どちらかというとチェ・ゲバラという男について淡々とドキュメンタリー風に追っていく映画でした。
フルヘンシオ・バティスタによる独裁政権をフィデル・カストロと共に倒すキューバ革命までを描いた『チェ 28歳の革命』(The Argentine)と、ボリビアでの敗北と処刑までを描いた『チェ 39歳 別れの手紙』(Guerrila)の二部作に分けられています。
戦闘シーンが多く、銃弾の音とかがすごくリアルな感じがして本当にいつでも簡単に死んでしまう戦場のイメージを上手く描き出されていて、緊張感がありました。
チェ・ゲバラをベニチオ・デル・トロが演じているのですが、顔こそそんなに似ていないものの、きっとこういう感じの人だったのかな、と思わせるような迫真の演技でとても良かったです。
僕は前編の『28歳の革命』の方が面白かったと思います。
後編の『39歳 別れの手紙』は、彼が死んでしまうということが分かっているためか、映画が始まってから終わるまでずっと不穏な雰囲気と寂しい気持ちが漂っています。
この映画はあくまで伝記映画なので、実際は違うところもあるかもしれませんが、このチェ・ゲバラという男が中南米にとって、いや世界にとって如何に大きな影響を与えたのかを考えると凄まじいものを感じました。
勿論、それは決してネガティブなものではありません。
彼のしたことは英雄的であるし、男なら誰もが憧れるような存在であることでしょう。
純粋なまでに世の中の悪政に立ち向かう姿は、まさに現実にいたヒーローだと思いました。
しかし、この感想はあくまで、上記二本の映画を見たものであります。
僕はまだ彼についてこれらの映画で描かれたこと以外についてよく知らないので、この場でチェ・ゲバラについて語ることは伏せておきます。
話を映画に戻しまして、この作品は、かなり見応えのある作品でした。
全編の上映時間が4時間30分にも及ぶため二部作に分けられており、僕も日をまたいで見たのですが、これは逆に一気に見たほうが良かったかもしれません。
やはりどうしても後編は救いがないイメージが漂い、これだったら前編で見るのをやめておけば良かったと思わざるを得ませんでした。
しかし、逆にそう思わなければ、彼が完璧で英雄的な革命家という映画を見る前のイメージと何ら変わらぬ、極端な言い方だとスーパーヒーロー映画になってしまったかもしれません。
伝記映画ですのでハリウッド映画的な大どんでん返しとかは無いので、それは予想できたことかもしれませんが、とにかく後編のゆっくりと崖を落ちてゆく感じは彼が完璧な革命家ではなく、革命を志した一人の男という側面を映し出してたことは良かったとも言えます。
しかし、僕が一番良かったと思った作品は、ウォルター・サレス監督の『モーターサイクル・ダイアリーズ』です。
この映画はかなり良かったと思いました。
あらすじ
1952年、アルゼンチンのブエノスアイレスに住む医大生エルネストは、友人のアルベルト・グラナードと共に1台のバイク(ポデローサ号)にまたがり、12,000キロの南米旅行へ出かける。
チリの最下層の鉱山労働者やペルーのハンセン病患者らと出会いなど、途中巻き起こるさまざまな出来事を通して、南米社会の現実を思い知らされる。
この映画を通して青年エルネストが後にチェ・ゲバラになる片鱗を少しずつ見せるのですが、それ以上に映画として良かったと思いました。
僕が以前タイに行った時に、彼らと同じように友達二人でと一台のバイクにまたがり山道を走ったことを思い出しました。
街から離れるに連れ、看板から英語の表記が消えていき、たまに家がポツンとあるだけの山道で牛の群れが横断していたり、たまに荷台に人を乗せたトラックがすごいスピードですれ違ったり、「ああ、外国に来たんだな」 と思わせたその風景はすごく印象に残っていました。
主演のガエル・ガルシア・ベルナムも良かったです。
優しくて、ハンサムで、正直者で、正義感が強い青年エルネストを見事に演じました。
後に壮絶な人生を歩んで、若くして亡くなるということを考えた時に寂しさを感じさせるのは、おそらく彼の演技と監督の一切誇張しない自然な見せ方のお陰でしょう。
特にこの映画については、チェゲバラについて全く興味が無くても、面白かったと思える映画だと思います。
僕もそのような人間の一人でした。
久々にジーンと心に残る作品に出会えたような気がしました。
これを機に、チェ・ゲバラについてちょっと勉強してみようと思いました。