エーブックスタッフの水野です。
先日、井上雄彦の『バガボンド』の35巻が発売され、早速買ってきて読みました。
15年続いてきた連載ももうすぐ終わりを迎えそうなのですが、ここに来て、こりゃもう一山挟むのかな?と思いました。
雨が降ると川の水が溢れ、浸水してしまう不毛の地を開拓するべく、武蔵が、身寄りのない少年の伊織と一緒に奮闘します。
柔らかく、自由で、そして力強い『水』を、小次郎の剣に例え、その水と戦います。
昔からですが、より一層、精神論のような話になってきてなかなか話が進まないのですが、相変わらず続きは気になりっぱなしです。
バガボンドは中学の頃に読み始め、気付けばもう10年近く追って読んでいます。
吉川英治の『宮本武蔵』を原作とした漫画なのですが、キャラクターたちがかなり色付けされております。
僕は、原作は読んでいないのですが、昔大河ドラマでやっていたのを見ていました。
出てくるキャラクターたち全員が魅力的なのです。
宮本武蔵は、若い頃は悪童や鬼の子と呼ばれ、野蛮な限りを尽くしており、イメージ通りなキャラクターだったのですが、物語が進むと精神的に成長し、哲学的な人物になっていきます。
対する佐々木小次郎は、傲慢で少しキザでナルシストのようなイメージがあったのですが、バガボンドでは、無邪気で、子どものようであり、女性のような風貌をした美青年。そして、聾唖であります。
他にも武蔵が道場破りに入った京都の剣術の名門、吉岡家の一門も曲者揃いです。
当主である長男の吉岡清十郎は、女好きの小柄な美剣士。剣術よりも酒や女が好き。しかし、いやらしさはないのです。原作ではかなり傲慢な感じのようですが、バガボンドでは、傲慢というよりワガママな少年。稽古などほったらかし、色町ばかりほっつき歩いております。しかし、剣の腕は超一流。
弟の吉岡伝七郎は、兄とは対照的でまさに剣の鬼。原作では厳格な兄に対する、温和な弟、のイメージですが180度違い、遊んでばかりいる兄を憂い、日々稽古に明け暮れており、一門を侮辱した武蔵に勝つ!と燃えているのです。
顔が先日、国民栄誉賞を受賞したゴジラ松井です。
他にも、武蔵の幼馴染であり、元々は唯一、武蔵の相手を出来るほどの剣の腕前であったが、臆病な性格から嘘と女と酒に溺れていくという、(人間離れした武蔵や小次郎たちとは違い)最も人間らしさを持った本位伝又八。
武蔵に想いを寄せる幼馴染、おつう。
吉岡十剣から、吉岡兄弟亡き後、武蔵に徹底した復讐を誓う策士、植田良平。天狗と謳われる祇園藤次。
無邪気でただ命のやり取りを欲する槍の名手、宝蔵院の胤舜。
昔、武蔵に殺された盗賊の弟であり、死神と謳われる鎖鎌の名手、宍戸梅軒こと辻風黄平。
柳生新陰流の後継者、柳生兵庫助。その祖父、天下無双と謳われた柳生石舟斎。
小次郎の親友、草薙天鬼。小次郎の兄弟子、伊藤一刀斎。関ヶ原の西方の残党、猪谷巨雲。
など、語りつくせないキャラクターでいっぱいです。
バガボンドは主に、
三章からなっており、1~13巻が『宮本武蔵編』、14~20巻が『佐々木小次郎編』、そして21~現在が『地上最強編』と分けられております。
僕が好きな戦いは、猪谷巨雲と佐々木小次郎の戦いです。どちらも疲労の限界に来ており、ただ目の前に現れたから戦う、という最悪の状況から、最期にこんな強い男と出会えた喜びという “得難き日” に変った瞬間が鳥肌ものでした。
バガボンドの36巻の発売は、2013年秋の予定です。今から楽しみです。