大正11年に成文堂から発刊された本をご紹介します。
「是丈は心得おくべし」
タイトルからして、おっ、私の非礼、非常識を改めてくれる一冊だ、ということで手に取ってしまいますね。
最初にこんなことが書かれています。
恥をかかず損をせず、賢明なる紳士として通るに「是丈は」心得おくべき必須要項を摘採墾
示せんとせるもの本叢書に御座候。
第一章はその頃、主流になりつつあった洋装について。
下シャツとズボン下
シャツは四季ともに白にとどめを刺す。薄い色のある物は稀に用いぬでもないが、黒ずんだネルの如きは、紳士の着るものとしない。カラーとネクタイ
カラーにも日本でも縞物などを稀に見るが下賎である。まずこれは絶対に白に限る。旅役者でもあるまいし、色つきのカラーなどは平に禁物である。襟巻は女のもの
毛皮の襟巻などが、近代だいぶはやり、動物の形のままのものなどを仰々しく首から顔へと覆いかけている紳士などを見ることがあるが、不作法千萬である。洋装に襟巻は由来あまり用いぬもので、襟巻はむしろ婦人のものとされている。ハンケチの入れどころ
ハンケチは必ず白に限り、しかも他人の前で用いる時は新に限る。始めは四つに折って胸のポケットに入れ、一度でも使えば今度は畳まずにバラバラ広げていい加減に丸めて又胸のポケットに入れる。
ズボンのポケットに入れること、使ったハンケチを畳み直すこと、厚ぼったい大きいハンケチを持つこと、皆下品である。百姓と笑われる。ステッキ
ステッキは男はまず必ず持って外出することになっている。西洋でも女は旅行して山とか温泉を散歩する時などでなければ絶対に持たぬ。
まず、著者がかなり上から目線で書いていることが読んでいておもしろいですね。
その表現も今となっては大胆で、また内容も一方的で、愉快です。
「旅役者でもあるまいし」「百姓と笑われる」と、この表現だけで、今では著者が全然、賢者でも紳士でもないじゃないかと笑われることでしょう。
しかし、読んでいて当時の風俗、風習がわかっておもしろいのですが、ステッキは必ず持つと書いてあり、驚きました。
傘以上に、絶対、店で忘れてきてしまいそうです。
続きはまた。
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